椿ノ華



「…お母さん…」


自然と溢れていた。

バイトと勉強、そして家事。

貧しかったし慌ただしかったが、
暖かかった生活。

小さなテーブルで、
談笑しながら食事をしていた頃が懐かしく思えた。


「其処の素敵なお嬢さん」


後ろで聞こえた声に、ふと振り返った。


「…何方様、ですか?」


其処に立っていたのは、端正な顔立ちの青年だった。



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