椿ノ華
車に乗り込み、走り去っていく壱を見送った。
「…お兄様?入りましょう、冷えますから…」
「…ああ」
椿を置いてすたすたと行ってしまったため、
やはり顔色は伺えなかった。
「壱の話になると、どうしてこんなにも過敏なんだろう」と。
「自分には分からない確執でもあるのか」と、
それくらいにしか考えていなかった。
「…椿」
「はい、お兄様」
「見慣れない物ばかりを身に付けているが、壱からの贈り物か?」
「あ…はい。壱さんに買って頂きました」
「…そうか」
「…変、ですよね?」
「…いや、似合っている」
そう言い残し、階段を上って行ってしまった。