龍蝶
「佳乃」
誓が呼んだウチの名前は何故か、自分の名前ではない気がした。
自分の名前なのに、全然違う人の名前を呼んでいるみたいだった。
「すみません・・・遅れました」
やっぱりスイッチを入れて話す。
嵐士たちだからって、もうスイッチは切らない。
もう、11月。
あと1年もすればウチはいなくなるんだから。
全てが終わるんだから。
「・・・後でちょっと来い」
眉間に皺を寄せた嵐士が言ってくるけど、聞こえないふりをした。
HMが終わってすぐに教室を出た。
嵐士と誓が呼んでたみたいだけど、それどころじゃない。
やっぱり5つの席がぽっかり空いてた。
多分屋上だ。あいつらはあそこにいる。
歩くスピードを少し早めて、屋上に向かう。