龍蝶
それでも気にせずスイッチを入れて咲羽を見据える。
「・・・・そうか」
少しの沈黙の後、咲羽はそう言ってウチに背を向けた。
「理事長室」
咲羽にだけ、ギリギリ届くくらいの声でつぶやいた。
その声に気づいたのか、チラリ少しだけ振り返った咲羽。
けれどまた歩き出す。
咲羽以外の時間が止まったように見える。
皆動かない。
咲羽の動きを少したりとも見落とさないように、一つ一つの動きを目で追う。
“誰もが憧れる総長”
まさしく咲羽はそれなんだろう。
憧れの眼差しと共に教室を再び出て行く5人。
完璧に時間が止まっていた空間が、動き出す。