龍蝶
理事長室の前、ノックする手が空中で止まって動かない
結局何も変わってないのが、現実。
昔も今も、弱いまま
「佳乃、いつまでそこに立ってんだ?」
不意に中から聞こえた陸の声
優しい、変わらない陸の声
「顔見せろ、安心できねぇだろーが」
「っ・・・」
どうして、わかったんだろう
声は、出していないのに
陸は昔からそうだった。
いつだって、どこにいたって“私”を見つけてくれた
陸の言葉におされ、ゆっくりドアを開ける
やっぱり、嵐士も誓も栞もいる
「・・・」
今更だけど、泣き顔を見られたんだよね・・・
そう思うと、急に恥ずかしかくなった
「何勝手に赤くなってんだ」
「なってねぇ」