龍蝶
「そんなとこで、何してんだ」
ふいに、後ろから聞こえた声に振り返った。
「今日は、雨だぞ」
見れば誰でも分かるようなことを、真顔で言うソイツ
やっぱり今日も、失敗一つ見当たらない綺麗な顔で。
どこまでも、真っ直ぐな瞳で
「また泣いてんのか」
ウチのことを射抜いてくる。
「さ、くは・・・・さん」
こんな時でも、空に一番近い場所でもスイッチが入ってしまう。
その事が、後ろめたくて。
恥ずかしくて。
惨めだった。
「咲羽」
「・・・え?」
「咲羽だ」