龍蝶
自分を、守るためだけに傷つけてごめんね。
誘ってくれて、ありがとう。
「そーゆーことだから、じゃ」
咲羽の目をみずに、出口に向かう。
雨の音が、自棄に大きく聞こえた。
ずぶ濡れになって、重い制服を引きずるように歩く。
「佳乃」
呼ばれた名前に、動きを止める。
出口はもう、目の前。
「お前の情報のおかげで、昨日助かった。サンキューな」
「・・・っ・・・」
なんで、ありがとうなんて言うの。
ひどいこと言ったじゃない。
なのになんで、ありがとうなんて、言うの・・・っ
でも、でも、良かった。
傷つく人が減って、少なくて良かった