私と彼女の関係
あれきり、
彼女の時間は止まっていたのだ。
毎日が真二の後を追い、
同じ夢、
彼との思い出。
思い出す彼との時間が、
美幸を嫌ほど、束縛していた。

私には理解できない想いだった。
私は今まで、引きずる恋なんてしていない。
相手から言い寄られる付き合いが多かった。
自分から想いを伝えるなんてしないし、
しなくても相手には困らなかった。

好きと言われ、嫌いでもなかったから、
付き合う。
そのせいか、
いつも別れを切り出すのは自分で、
一方的に、相手を遠ざけた。
その内の一人が、
ストーカーになった事もある。
私には、ストーカーの気持ちが理解できなかった。
相手に自分への気持ちがないのに、
付きまとって何を得られるのか。
何もしてあげられない。
でも彼は、ずっと追ってきた。
彼の中で、勝手に私の存在を大きくし、
本物の私を見ようともしてくれない。
憐れな愛情だ。
彼からの電話が鳴る度に、脅えた。
彼が接触を試みた時は、
私は恐ろしくて、警察を呼んだ。
彼も流石に、手を出せず、
しぶしぶ帰ってくれたが、
当時の彼の私への"愛情"は、
私の恐怖だった。

今美幸を目の前にし、
私は真二が美幸を遠ざける事に、腹がたっている。
何て理不尽な考えなんだろう。
ストーカーする美幸を受け入れ、
その上、
美幸を避ける真二に腹を立てている。

自分は、相手から逃げたかった。

美幸は女の子だし、
真二の顔を見るだけの無害だ。

違う。
彼だって、
実際、私に手を出すなんて
出来なかったはず。

「ただ、
 もぅ一度、会って話しがしたぃ…。」

美幸の言葉が、彼の顔と被った。
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