【短編】さくら色。
世界に一冊の本
12月に入りクリスマスに近づいた頃

突然浅見さんがお店にやってきた。

『どうしたの?クリスマスに来るって言ってたのに!?』

って聞いたら

『クリスマスまでに渡したい本があって』

と浅見さんは言った

あたしの唯一の趣味は読書だから、本を持ってきてくれたんだ。

やっぱり浅見さんは優しい。

そして浅見さんは鞄から本を出した。

でも それはあきらかに本ではなくて
洋食屋さんとかのメニューみたいなモノだった。

でもそれには

今 売れてます!とか

当店のおすすめ品

と書いてあるポップが貼り付けてあってそれをひらくと…

1ページ目に目に飛び込んできた文字

惠には

幸せになる

権利と義務がある。

と浅見さんの字で書かれていた。

そしてページをめくる。

次は

惠の権利

惠は本当に色々苦労してきた。
俺が出逢ってから
知っている苦労は
今までの人生の苦労のほんの一部だと思う。そのご褒美としてけいこには幸せになる権利がある。

と書かれ、次のページには

惠の義務

惠の幸せは正徳の幸せ。俺が幸せになるには惠が幸せになる必要がある。よって惠には幸せになる義務がある

と書かれ

最後のページには

惠が人生を振り返った時、俺と出逢った事が幸せの始まりだったと思えるように三人で(妻も一緒に)一歩一歩あまり頑張らずに人生を歩いて行きましょう。
俺は惠と出会えてすでに充分幸せだけど…。

と書かれていた。

あたしは
浅見さん泣きながら『ありがとう』と言うのが精一杯だった
これは世界に一冊しかないあたしだけの本。

あたしは生涯ずっと大切にする事を誓った。
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