PM.16:00。
 
それから図書館の閉館時間まで、長峰君の左隣にあたし、そのまた左隣に早見君、という形で3人並んで読書にふけり。

やがて下校のチャイムが鳴ると、あたしたちは校舎を出て、長峰君とは校門の前で別れた。


「あ、そうだ。今度、映画観に行こうよ。面白そうなのが先週公開になったばっかなんだよ」

「なんてタイトル?」

「んー、秘密」


そんな他愛ない話をしながら、早見君と手を繋いで歩く。

早見君はあたしが道路側を歩かないように左手を握ってくれる。


優しい彼に不満はない。

だけど早見君は知らないの。

どうしてあたしが図書館に通うのかも、左手でぎこちなく本のページをめくっているのかも。


だって右手は―…。

『PM.16:00』

それは長峰君からの逢瀬の合図。
 

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