密の味~欲しがる男~
「キスだけで濡れてるね」
蜜で湿った指先を躊躇う事なく舐めて味わう。
その仕草から、たまらなく妖しい色気が漂った。
「君もしたくなった?」
「……」
無言でいる私の、表情だけを読み取って微笑む優一。
そのままシートを倒し、覆いかぶさりながら耳元で囁いた。
「人のモノだと奪いたくなる」
清廉潔白の好青年みたいな顔して。
簡単に欲しがる。
したたかで欲にまみれた、嫌な男。
――だけど欲しい。
ふと良太の事が頭をよぎったけど。
それもたった一瞬。
あっと言う間に。
五感の全てが、優一で占められた。