不敵な微笑み
「待てよ。」
「!!」
閉まる寸前のエレベータに乗り込んで来たのは元彼だった。
「何?」
「煙草買いに行くんだよ。」
ドアが閉まる。
気まずいのに、妙に心拍数が上がる。
「ねえ、名字が違うのに兄弟なの?」
沈黙が辛くて、気になった事を聞いてみた。
「ああ…親が離婚して別々に引き取られたからな。でもそんな事関係なく、素直で可愛い弟だよ。」
「…そっか。」
私には冷たかったこの人も、弟には優しいのか。
「萌、大事な弟を泣かすなよ?」
そう呟いた途端腕を掴まれ
「……ん。」
強引なキス。
「…ちょっと…ぁ…」
唇の隙間から熱い舌が入ってきて、私の舌を絡めとる。
そうして私を弄び、ドアが開く直前に唇を離してニヤリと微笑む。
「泣かせるなって言ったくせに、どういうつもり?」
声を荒げて反抗したのに
「黙っていれば、泣かせないだろ?俺と萌だけの秘密だよ。」
この人は自分の魅力を知っている。
私は当時から、この不敵な笑みには逆らえなかった。
だから、ほら。
妖艶な瞳に見つめられ、私の理性は停止した。