古城の姫君
 一方、スウォードは9日かけて、トレニア国に帰還しました。

 スウォードが帰ってくると、まっさきに出迎えたのは弟のハイドでした。

「お兄さま、おかえりなさい!」
 満面の笑顔でハイドが言いました。

 その笑顔を見て、スウォードは心の中で思いました。

 もし自分があの男に殺されていたら、この笑顔を見ることはできなかった。
 
「……負けたよ。ラティスフォリアに。
 もっとちゃんと剣術の稽古をしておけばよかった」

 ひとりごとのようにスウォードが言いました。

「僕は、お兄さまが生きて帰ってきたから、それでいいです」

 それを聞いて、スウォードははっとして、ハイドの顔を見ました。
< 101 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop