古城の姫君
 いくつも扉があり、それをジンジャーがひとつひとつ開けていきます。
 ですが、中には誰もいません。湿っぽい空気が漂い、古めかしい家具がぽつんと放置されているだけです。

「……変ですね」
 扉を閉めると、ジンジャーがつぶやきました。

「何が」

「無人のはずなのに、どの部屋もきれいなんです。誰かが掃除でもしたみたいに」

「掃除が好きな幽霊でもいるんだろう」

 クロークスが笑いながらそんな冗談を言うと、不意にジンジャーが足を止めました。
 見ると、なぜかひとつだけ、扉が数センチほど開いたままになっています。

 どうやらこの部屋に人がいるようです。
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