古城の姫君
クロークスは婚約者の女性のことを「あの人」と他人のように言いましたが、これには理由がありました。
それは1ヶ月前のこと――。
*
「お見合い?」
クロークスは母親のカモミールに聞き返しました。
あまりにも急な話だったからです。
「そう、お見合いをするのよ。
これ見て。ねっ、かわいいでしょ」
カモミールは写真を見せました。そこには20代前半くらいのショートカットの女性が写っています。
「なんでそんな急に……」
「父親は医者で、家柄もいいし、なんの問題もないわよ」
乗り気じゃないクロークスとは正反対に、カモミールはこの女性と息子を結婚させようという気持ちでいっぱいでした。
クロークスには幸せになってほしい。しかし、息子を思うその気持ちが強すぎたのです。
本人はまったくやる気のないお見合いが始まりました。
それは1ヶ月前のこと――。
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「お見合い?」
クロークスは母親のカモミールに聞き返しました。
あまりにも急な話だったからです。
「そう、お見合いをするのよ。
これ見て。ねっ、かわいいでしょ」
カモミールは写真を見せました。そこには20代前半くらいのショートカットの女性が写っています。
「なんでそんな急に……」
「父親は医者で、家柄もいいし、なんの問題もないわよ」
乗り気じゃないクロークスとは正反対に、カモミールはこの女性と息子を結婚させようという気持ちでいっぱいでした。
クロークスには幸せになってほしい。しかし、息子を思うその気持ちが強すぎたのです。
本人はまったくやる気のないお見合いが始まりました。