古城の姫君
 カルミアもクロークスと同じように、親だけがこのお見合いを成功させようと張り切っていました。

 王子とのお見合いを断ることはできないので、両親に連れられ、仕方なくこの宮殿に来たのです。

「あたしはあなたと結婚さえできれば、それでいいのよ」

   *

 クロークスは、あの日カンナに言われた言葉を思いだしていました。

「あたしはあなたと結婚さえできれば、それでいいのよ」

 それでみんな丸くおさまる。母親は結婚させたいと思っているし、カンナの両親も娘をいいところに嫁がせたいと思っているし、カンナは結婚さえできればいいと言った。

 周囲に流されるように、クロークスとカンナは婚約したのです。そこにクロークスの意思はまったくありませんでした。

 なんとも思ってない人と婚約し、結婚させられてしまう。
 それがどうしても納得できません。
< 33 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop