古城の姫君
 そして9時数分前に、仕事が終わったカルミアが姿を現しました。

「待たせちゃってごめんなさい」

「あ、ついさっき来たばかりだから、そんなに気にしないで」

「いつもいっしょにいる人は、今日はいないんですか?」

 ジンジャーのことを言っているようです。

「今日は来ないよ。それよりどこに行く?」

 するとカルミアは

「あんまり治安が良くないんですよ、ここらへんは。夜になると街角に売春婦が立ったり、強盗が出たり、いろいろあるんです。だからここでいいですよ」
 と言いました。

 もし、警護の兵隊つきで馬車に乗ってここに来たら、そんな現実はわからなかったはずです。父親は、自分で現実を知りなさい、と言いたかったのかもしれません。
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