古城の姫君
 そして、夜になりました。

 クロークスは約束の時間の9時10分前にトレーラーハウスを出ました。

 その後ろから少し離れてジンジャーがついていきます。二人っきりになりたいクロークスが遠くにいてほしいと言ったので、クロークスに何かあったときにすぐに駆けつけられる程度の距離を保ち、離れて待機していました。

 クロークスがアプリコット城の前に行くと、すでにカルミアが待っていました。

「ごめん、待たせちゃって」

 そう言われたカルミアは、視線をそらし、顔をこわばらせています。何かがいつもと違いました。

「……クロークスさん、あなたに言いたいことがあります」

 カルミアはその場にしゃがみこんで、地面に手をつけ、何かをつぶやき始めました。よく聞いてみると、呪文のような言葉をつぶやいています。
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