古城の姫君
 ようやく二人の力で押された箪笥が2メートルほど左にずれ、床につくられた脱出用の出入り口が現れました。
 
 出入り口は引き戸になっていて、カルミアが右から左に戸を開けると、人が一人やっと通れる大きさの穴ができました。

「入ってください。ここからお城の外に出られるようになってます」
 
 カルミアにうながされ、リリィは床にあいた四角い穴に両足を入れ、床に腰かけて両手をつき、ゆっくりと自分の体を穴の中に沈めていきました。
 そうして手を離すと、すっと下に落ちて、地下通路に着地しました。

 地下通路は薄暗く、上からの光が少しだけ射しています。

「暗いかもしれませんけど、壁をつたっていけばちゃんと出られますから。
 足元には気をつけてくださいね」

 上からカルミアの声がしました。
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