古城の姫君
 慌てて家来が自分の剣を取り返そうと両手を伸ばしますが、剣はその手を逃れ、老婆の目の前にカシャンと音を立てて倒れました。

 この一部始終を見たクロークスは、リリィと初めて会ったとき、モップを魔法で動かしていた光景を思いだしました。

「ま、今はこの程度のことしかできないけどね」
 と、老婆は言いました。

 自分の魔力を見せつけた老婆の前に落ちた剣を、家来はばつが悪そうに拾い上げ、鞘に戻しました。

「すごいおばあちゃんね」
 カンナは初めて魔法を目の当たりにしたので驚いています。

「おばあさん、僕に力を貸してください」
 クロークスが真剣な顔でそう言うと、老婆は返事の代わりににっと笑ってみせました。
< 78 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop