古城の姫君
 クロークスは女性の顔を見ました。

 どこかで見たことのある顔で、クロークスは思いだそうとしました。

 そして、それが昔アプリコット城で出会い、片思いで終わった相手のリリィだと気づくと、驚き、リリィをまじまじと見ました。

 10年もの月日が流れたとはいえ、あの美しい黒髪と大きな瞳は若い頃と変わっていませんでした。

 その表情の変化を、隣にいたカンナはすぐに気づきました。

「……リリィ」
 
 クロークスは、あの頃と同じように呼び捨てでリリィを呼びました。
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