古城の姫君
 5日かけて、トレニア国の軍勢はラティスフォリアの国境前に到達しました。
 たくさんの兵士が乗った馬のひづめが、大地にけずりとったような跡を残していきます。

「あと3日もあればラティスフォリアのルピナス宮殿に到着します」
 ベロニカ将軍が言いました。

「今までなんの攻撃もないのがかえって不気味だな」
 スウォードはそう言って、黙りこみました。

(ルピナス宮殿前で、あえて背水の陣というわけか?
 
 それともすでに白旗をあげたのか?

 どういうつもりだ、クロークス・サイモン……!)

   *

 一方、クロークスは密偵を放ち、あと3日で敵の軍勢が侵攻してくるという情報を家来から聞きました。

 クロークスは4人の女性を集め、これからどうするかを話しました。

 できるだけ人を殺さず、傷つけない戦いをしたい。

 それがクロークスの考えた、ラティスフォリアを守るための、血を流さない戦争でした。

 国王として国を守るために必死なクロークス。
 カンナは複雑な気持ちで見守っていました。自分はあくまで国王の妻であり、口を出せる立場ではありません。

 ただ、死なないでほしい、それだけを思っていました。
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