古城の姫君
「そんな理想論が通用するわけないだろう!」
 と、スウォードが言いました。

 しかし、クロークスはもう戦う気はないらしく、剣を抜こうとしません。

「理想論じゃない。理想は行動に移すことで現実になる。
 あなたにも家族がいるだろう? もしあなたが俺に殺されたら、悲しむ人がいるはずだ」

 穏やかな口調で、クロークスが言いました。

 言われたスウォードは、弟のハイドのことを思いだしました。
 もし自分が死んでしまったら、絶対にハイドは悲しむだろう。

 今、国王として、人として、大切なことをこの男に教えられている。
 スウォードはそう思いました。
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