【TABOO】こうなることはわかっていた
こうなることはわかっていた



「ちょっといい?」

男はそう言うと私の唇から、まだ吸っている最中の煙草を取り上げ口にした。

強く深く吸い込んでいる。男の両頬が窪んだ。

軽く開いた男の唇の隙間で紫煙が揺らめく。

揺らめいた紫煙は吸い込まれ、唇の隙間から白煙となって吐き出される。

その一連の動きは、いつか観たチープな映画のワンシーンの様で私を苛立たせた。

私は男の正面に顔を向けたまま眼だけを伏せて、
「それ、あげる」
と言うと、新しい煙草に火を点けた。


< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop