こいわずらい。
こいわずらい。
 
まさか25歳のいい大人にもなって母校の小学校に足を運ぶとは、思ってもみなかった。


「卒業生一同、起立、礼」


今日は卒業式。

歳の離れた姉夫婦がどうしても都合がつかず、頼み込まれたあたしは2人の代わりに甥っ子の卒業式に出席していた。

ちょうど仕事の休みも取れたのでそれはいいのだけれど、かつてあたしも通ったこの小学校には、いろいろと思い出が多すぎる。

甥っ子の拓馬が退場していく姿をビデオカメラに収めながら、あたしはふと、ある男の子のことを思い出していた―…。





同じクラスだった彼は、当時、背の小さかったあたしとほとんど変わらない身長だった。

にも関わらず。


「いいよ、代わる」


クラス委員の仕事か何かだったのだろう、掲示物を剥がそうと椅子に乗って背伸びをしていると、いつの間にか彼がそばにいて作業を代わってくれたことがあった。
 

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