それ以上は、ダメ。
 
やがて満足するまであたしの口を弄んだ元カレは、熱を帯びた瞳を光らせあたしに囁く。


「…やっと捕まえた」

「っ」


そのときの彼の瞳に映るあたしの顔といったら、あの頃、ただただ彼に翻弄されていた頃のままで。

今までの穏やかだった日々が静かに崩れていく予感がして、あたしは声が出せなかった。

彼の手にかかると、せっかく張った予防線なんてまるで無意味で、例えあったとしても、いとも簡単に踏み越えられるのだ。


「続き、してもいいだろ?」


彼が、観念したあたしのブラウスのボタンを1つ、2つ、焦らしながら外していく。

あたしはその手を止めて。


「それ以上は、ダメ」


ここでは―…。

いっそのこと、壊れてしまえ。
 

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