明日ここにいる君へ






でも……、





やっぱり今日は……、おかしかったのです。









私がシンに髪を結ってもらっていると……。




「シンちゃんってこの人の母親みたいだな。」



髪をいじられ身動きできない私の目の前に…、再び悠仁。




しかもシンはちゃっかり「ちゃん」付け。


でもって私は「この人」。


どっちが他人行儀なのか?



ひとまず、雑念は取り払って……。


冷静に対処しようと……心がける。




「うん、いつもすっかり頼っちゃって。シンはしっかりしてるからね。」



何も言えずにいるシンに代わって、優等生の…返し。




今の会話に問題は…ナイ。




「……あれ、無視はやめたの?」



「……なんの話?」




この男……


どこまで私を追い詰めるのだろう?




「…てか、アンタって猫っ毛なんだ?」




「………?!」



悠仁が…


私の髪に触れる。




どよっと…教室がどよめく。


その上…、暫しされるがまま、髪を…梳かれてしまった。





『……可笑しくないですか?』




昨日までほぼ皆無だったはずの…私達の関わり。




ソレがなぜ……?!なにゆえ突然こんなに……スキンシップを図ろうとする?





「なんかふわふわしてるし。」




髪……!


そんな優しい手つきで触らなないでよ。



なんか……

変な気分になる。




「……。ウチの『ナナ』そっくり。こんくらいで…気持ちよくなっちゃった?」




「…………?!」



私を覗き込むその顔が妙にセクシーで……。



本当に、頭がクラクラしてきた。





「…えっと、『ナナ』って?」


シンがようやく口を開く。



「ウチの飼い猫。コレと違ってすっげーカワイイ。」



いよいよ私は…『これ』ですか。



「名前、可愛いね。悠仁くんが付けたの?」




……シン!それは禁句!



すっかり『名無し』が板についちゃったから…、私が名前を『ナナシ』とネーミングしたら。




奴はすぐに却下。

『だったらナナでいーじゃん。可愛いし。』



それはまるで…私の名前を誉められた気がして。


妙に……


恥ずかしかった。



幼い頃には。自分で、自分のことを…『ナナ』って呼んでいたせいだ。







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