明日ここにいる君へ
見抜かれやしないかと…、
不安は過ぎった。
君があまりにも曇りない瞳で……
私を見つめるから。
「……なら、いいけどさ…。」
悠仁はぽつりと呟いて…。
私の膝の上に、ナナを抱き下ろした。
「……ナナ……。」
さっき…、貴方のご主人様に言われたよ。
『もっと懐いたら可愛いのに。』
ゴロゴロと甘えるかのように…喉を鳴らすナナ。
「……いいなぁ、ナナは。」
こうやって寄り添って、自分が与えてきた分だけの愛情を…きっと返していのでしょう?
そんな素直さは……
私にはない。
堂々と人前で…一緒にいることさえできない。
だから、こんな風に…
優しくされていいような…人間じゃない。
「……学校で俺が言ったことだけど……」
突然、悠仁が口火を切った。
「……え…?」
「あんたがもよおしている時。」
「…………。もうちょっと発言に気を遣って欲しいな。」
「………だってアレは…。嘘ついて逃げようとしたから。」
「…………!」
「アンタの嘘なんて…すぐわかるんだよ。」
「…………。」
なら……、さっきのは…?
「騙されたフリをするのは簡単だよ。でも…知らないフリはできない、かな」
「…………。」
「ムカついて……、気になる。」
「…………。」
「知ってた?俺……、アンタが思い切り笑った顔って…見たことないんだよね。」
「え……。そう…かな?」
「アンタとこうやって話すようになってから…ずっと気になってたよ。俺の前では…笑えない?気のせいだと思いたいけど…、今もホラ…、顔が強張ってる。」
「…………。」
……え……?
そんな訳……ない。
「……。今のは、カマかけただけ。嘘でいいから…否定してくれたらいーのに。そしたら…騙されるよ?」
「…………。」
「……でも…、だからかな…。アンタといるとさ、いちいち感情が揺さぶられて…どうしたらいいのかわからなくなる。」
「…………。」
「いい意味で。」