明日ここにいる君へ
友達宣言から一夜明け、
緊張と興奮が覚めやらぬままの私に……
更なる刺激をもたらした朝一番。
神出鬼没な悠仁の……
気まぐれ(?)待ち伏せ。
「………。アンタ放課後っていつも何してんの。」
「……帰るだけだけど。」
「で?帰ってから何かすることあるの?」
「……勉強。」
「……うわ~……予想を遥かに上回る真面目っぷりだな。」
「………うるさいな。いいじゃない、別に人が何しようと。」
「…出た、冷血女。そんなんだから惜しいって言われるんだよ。」
「はあ?何それ。」
「ガードが固くて崩せないって。」
「……。それでなんで『惜しい』の?」
「……。いや、やっぱ何でもない。アンタにこういう話は通じないんだった。てか、突破口開いたのは間違いだったか。」
通じない…?
突破口?
「俺、オフェンスは得意。」
「……バスケの話?ルールよくわかんないけど…。」
「……うん、まあそんなとこ。てか、こんな単純なルールわからないって有り得なくね?」
「仕方ないじゃない。サッカーとか野球と違って、見る機会少ないし。」
「………。サッカーなら観るの?」
「うん、人並みには。」
「……。前に俺らの部活見にきてたじゃん。あー…、でも確かに興味なしって感じだったか。」
「……そう言うアンタはすごく楽しそうだった。バスケが好きなんだろうなって、見ててわかる。」
「え?」
「…?え。今私可笑しいこと言った?」
「……や。全く、全然。…てか、今のは得意のアノ手口?」
「はあ?」
「『押したりひいたり』。これが天然だとしたら、確かにこれは手強いな。」
「………。私らさっきから会話が成立していないように感じるんだけど…。」
「……相手がアンタじゃなきゃ通じるんだけどね。まあ、いっか。アンタはそのままでいろよ。下手に崩れても嫌だし。」
「………??」
「ディフェンダーになろっかなあ…。」
「はあ?」
登坂悠仁……。
『友達』とは、こんなに意思疎通ができずに成り立つのか?
途端に、生温い風が吹き抜けて。
君の前髪が…ふわりと舞い上がる。
それは…、
甘くもあり、
もどかしくもあり。
私の心情によく似た…
水無月の風。
「………あ。」
いつか……、足を止めた、公園の前。
「……どうしたー?」
「ん。……何でもない。」
朝顔が……、また、幾つか花を付けていた。