明日ここにいる君へ
先に教室に入ったのは私の方で……。
悠仁は、いつの間にか姿を消していた。
女子のみんなに囲まれたのは、彼が来る5分前くらいであろうか……?
いつもの顔ぶれが、待ってましたと言わんばかりに…顔を紅潮させて、私を輪の中心へと連れ入れたのだった。
「……で?…いつから?」
何の話かなんて、予想はついていた。
彼が『公認』と言ったのは…つまりはこのような状況になると予測していたのだろう。
相手が目立たない人だったらともかく、登坂悠仁であるのだから…、コレは致し方ないのだろうか。
わかっているのなら。
なぜ悠仁はあんなことをしたのか、些か疑問は残る。
温かく、力強い彼の手の感触が……、今更ながらに甦る。
「七世…顔真っ赤!」
「えっ。」
……しまった。
「……やましいことがあるって証拠かナ?……さあ、話そうか?昨日の…悠仁くんとのやりとりは何?その後二人で仲良く消えちゃうし。」
一人の女子が、わざわざぐいっと顔を近づけて……
瞳を逸らすことを、許さない。
軽くかわすことは……
今まで何回だってしてきたはずだった。
今回だって上手く……
「……今まで悠仁に興味なさそうだったじゃん。…むしろ騒いでたのはシンの方だし。」
「………!」
「付き合ってるの?」
「……そういうんじゃないよ。」
「けど昨日の今日って感じじゃなかったけど?」
……ホントウニウマク…ゴマカセル……?
自分に都合のいいように、周りに合わることは…簡単だった。
取り繕うのも、演じるのも、たやすいことだった。
なのに。
なのに……ここにきて、なぜ。
自分のとるべき行動が…見えてこないのだろう。
一歩間違えばきっと、そこは奈落の底。
天を見るか、地を見るのか……。
それは、自分にかかっていると……わかっているはずなのに。
人とちゃんと向き合うということは、こういうことなのか…?
幾多の選択肢を間違えずにいくには、嘘ばかりで塗り固めていくことになるのか?