明日ここにいる君へ
私の本当の気持ちは。
いつもいつも、どこかに置き去りにしてきて……。
それでどうして、上手くやっていけてると思っていたのだろう。
「七世。」
突然、穏やかな低い声が……、
私の背中へと呼び掛けた。
「…………。登坂…?」
いつの間にか背後に立っていた悠仁が……
当たり前かのように、私を下の名前で呼んだ。
「やっぱり誤解受けてたな。…ごめん。」
「……え?」
皆の視線は……一気に彼へと向けられる。
「俺はこの人から色々と相談受けてたんだよ。てか、俺が勝手に聞き出しただけだけどね。」
「…………。」
悠仁が……
ひとつひとつ、ゆっくりと…言葉を綴っていく。
「……相談?七世が?」
「うん。なんかさ、この人って勉強ばっかで結構知らないことあって。特に恋愛話になると、どうしたらいいかわかんないみたいでさ…、自分がどうしたらいーとか、つまんなそうになっちゃって相手に嫌な思いさせていないかとか、結構真剣に悩んでて……。」
「……え、そうだったの、七世…。」
悠仁の言葉は…驚くくらいに真っ直ぐに、皆の心に届く。
疑う余地もなく……。
「上手く話に入っているようだけど…、案外七世って聞き役に徹してただろ?笑顔は痛々しいし……、さすがに気になって。七世が俺んとこ警戒しないように…こっそり話し掛けたりしてた。」
「…………。」
「昨日はつい、あんな行動とっちゃったけど…。変な誤解はしないでやって。俺が勝手にしたことであって、変な風に捉えられたら…意味がないんだ。ようやく俺はこの人の『友達』っていう関係に漕ぎつけて、みんなに追いついただけ。それよりも……、七世が仲いい友達との壁を取り払うのが、俺の役目だったと思ってる。」
真剣な瞳……。
これが私を庇う為の嘘だとしたら……?
もしそうなら、ひどいことをさせているって、罪悪感に苛まれていただろう。
けれど……、
違う。
いつから。
いつから……気づいていたのだろう。
何度も何度も、君だけが……。
私に忠告してきたこと。
だからこれは……
登坂悠仁、
アンタの……
本音……?