明日ここにいる君へ
「……俺はその突破口を…開いた。…それだけだから。」
悠仁は2、3度私の頭を軽く叩いて。
それから……
ポンっと肩に手を置いた。
君の手の温もりが…伝わってくる。
「…後は…、自分で。」
呪文をかけるかのように。
言い聞かせるかのように……。
「肩の力抜いて。『いい格好しい』は…、もうやめておけよ?」
優しい温もりが……
離れていく。
私たちは、悠仁の背中を…ただ黙って見送った。
君はまるで何もなかったかのように……、
いつものように、男子に取り囲まれて。
屈託ない顔で笑っている。
もう、私の方を……
見向きもしない。
いつもみたいに、
目が……合うことはない。
「……七世。」
しばらくして、ようやく……
一人が口を開く。
「今悠仁が言ったこと…、本当なんだね。」
「…………。」
一体、何て答えたら良いのだろう。
自分でも知り得なかった感情を、きみが全てさらけ出してしまったのだから……。
下手なことを言って、君の言葉を汚したりなど…したくはない。
「正直…驚いた。それから、ちょっと悔しい。」
「……え?」
「どうして…悠仁なんだろうって。今まで一緒にいたウチらじゃなくて…、全く無関心同士かと思っていた二人の方が、理解し合ってたなんてさ。」
「…………。ごめ…」
「謝ることじゃない。けど、不思議で仕方ないよ?」
「………?」
「何で悠仁が…そんなことに気づいたのかってトコロが。」
「…………!」
「神様、仏様、『悠仁様』……。どんだけ周りを見てるのか、それとも…どんだけ七世を見てたのか。」
「……すごいって思う。本当に……。私には…できない。」
「……。私らからしたらさ、七世もそうだよ?人が気づかないことまで気ィ回してさ、けどそれってきっと、人一倍神経をつかってるってことで……。なのに平気なんだと思ってた。それが七世なんだと思ってた。どこかで一目置いていて……当たり前のように感じてた。七世からしたら、きっと悠仁もそんな存在……なのかな。」
「…………!」