明日ここにいる君へ
体育館で……
バッシュがフロアの上で
キュッキュッと……
擦れる音。
特に…悠仁が奏でる音だけが、大きく大きく…
私の耳に届いていた。
いつもいつも……
私の胸に響くのは、
そんな……
君がもたらす優しい音。
生きているって…証。
彼はシュートを決めると、
キュッと一回靴を鳴らして…
私のいるその方向へと振り返る。
高く翳された右腕の陰から、君の瞳が…垣間見える。
視線の先は…?
私はキョロキョロと辺りを見渡す。
『ナ ナ セ』
君の口は確かにそう動いて……
ぴたりと私を指差し微笑む。
「………!」
私は大きく頷いて、それから……
小さく返事を返す。
『 ヤ ッ タ ネ 』
柄にもないけれど、
胸元で小さく小さくガッツポーズ。
こんな小心者な応援を、君は一体どう受け止めたのか…、
コクンと頷いて、また私に……背を向けた。
梅雨時の蒸れ蒸れした体育館に、彼等の熱気が…より、身体を熱くさせていた。
燻る小さな喜び。
顔を手で覆って…
ぽつりと呟いた。
「好き……。」