明日ここにいる君へ
「それは…、昨日熱があって寝込んでたし…。もしかして酷いからって休んでるのかもしれない。」
「………。多分それは違う。」
「…………。」
「昨日…、ライン送った。既読になってたのに…。返事はない。それから、1回だけ…電話も。」
「………。」
「櫻井は連絡とってみなかったの?」
「…携帯番号…、知らない。」
「……え…?」
「ラインもメルアドも、知らない。」
「……………。そう…。あいつらしいね。」
「………?」
「とにかく、心配いらないよ。ただちょっと…、あいつも迂闊かなって思うけど。」
「……?うかつ?」
「こーやって、あいつの知らない間に…何か起ころうだなんて考えてないんだろうね。」
「…………?」
「櫻井。あいつは、多分…好きにはならないよ?」
「………え………?」
「例えば、櫻井がアイツを好きだとして…、あいつも、櫻井を気に入ってるとする。まあ…、それが、現状かもしれないけど……。この先、悠仁とどうなるってことは…ない。」
「……待って。私が悠仁を好きだって…いつ言った?」
「………。言ってないね、確かに。」
常盤くんは、やらかい物腰で……
痛い所をついてくる。
困ったかのような表情を浮かべて。
そのくせ……
一番触れられなくないような核心を……
確実に、ついてくる。
「櫻井と同じだね。例え好きでも……、アイツはきっと隠し通す。ギリギリのところで…嘘をつく。…逃げて、逃げて……自分が傷つかないようにする。」
「……………。」
「掴み所がない奴だろ?人あたりもいいし、一度仲良くなれば…懐っこい。一見カワイイ犬みたい。だからみんな近づくし…あいつの行く先には人が集まる。だけど…それを上手くすり抜けて、ふと…居なくなったりする。掴めるようで…掴めない。本当は、例えるなら…猫。」
「………。そうだね、それは…わかる気がする。」
悠仁がナナを可愛がるその光景が……
ぼんやりと、脳裏に浮かぶ。
「だから……、櫻井。時間の無駄だよ。」