明日ここにいる君へ
悠仁が―…、体育館を歩く音は。
廊下を歩く音と…同じ。
湿り気のあるフロアをぺタ、ぺタ、と鳴らして。
私のすぐ側まで…やって来る。
どんな言葉を…掛けて来るのか。私は、少し…期待してしまったのかもしれない。
「宏大、俺と組めよ。」
君が放った言葉は――…
私のすぐ隣り。常盤くんへと向けられて。
散々身構えて、緊張していた自分が…急激に恥ずかしくなってきた。
「――……七世は、シンちゃん達んとこ、戻っていーよ。」
目の前にしゃがみこんで、靴紐を結び直す君は…
視線を落としたまま。
こっちを見ようとは――…しない。
カカトをしっかりと入れて、キュッとひとつ音を奏でて。
君の相棒…、バスケットボールを掌で吸い付けるようにして…持ち上げると。
やっぱり常盤くんに向かって…、ニヤリ、と笑って見せた。
「………櫻井としたかったんだけどなあ…。」
常盤くんが溢した一言を。君は…どんな面持ちで聞いていたのかは…分からない。
その頃には、私達に背を向けて。
ハーフコートの向こう側へと、ボールを弾ませ…歩いていたから。