明日ここにいる君へ
高ぶる気持ちは…とどまることなく。
向かった病院の待ち合い室でも、まだ身体が…ふわふわとしていた。
悠仁が、私を……。
そう考えただけで、顔が…緩んでしまう。
きっと、今…鏡を見てしまったら、今朝の自分の言葉を…いとも簡単に撤回してしまうだろう。
「櫻井さーん、櫻井七世さーん、診察室へどうぞ。」
看護師さんが呼ぶ声に、ハッと我に返る。
「七世ちゃん、大きくなったねえー。」
「え?」
顔を上げたそこに…、年配の看護師さんが穏やかな笑顔を作っていた。
診察室に入ると、おじいちゃん先生が…パソコンに文字を打ち込みながら。
「今日はどうしました?」って聞いて来た。
それから…、手元のカルテに目を移して。
ようやく…こっちを見た瞬間……。
「…………『櫻井』…、――…ああ、七世ちゃんか。」
この、おじいちゃん医師まで…懐かしそうに眉を潜めた。
「……あの……?」
「覚えてないかな?まあ、まだ小さかったからね。しかし、まあ……そっくりだねえ、目元なんて特に。」
「……………。」
「おばあちゃんの佳世子さんに……。」
おばあちゃん、に――…?
「ここは佳世子さんのかかりつけでね、内科だけど小児科も兼ねてるから…君を連れて来たこともあったんだよ。」
「……あ……。そうなんですか……。」
「今は…もう、高校生だよね。」
「はい。」
「あれから…再発はしてないかな?」
「……はい。あの、何で先生が知って…」
あの時……
私が入院したのは。大学病院だったはず…。
「ああ、最初診たのは私だったからね。しかし、まあ…奇跡みたいな話で、当時は驚かされたよ。佳世子さんはまるで自分のことのように喜んでいたなあ…。」
「………奇跡…?」
「全く症例がなかった訳じゃないけどね、イメージ療法っていうものもあるくらいだから。」
「………………。」
「願いが…届いたのかもね。」