明日ここにいる君へ
病院での診断は…、ただの風邪では無かった。
『溶連菌感染症』。抗生剤を飲んで2日くらいしたら…もう登校も可能らしい。
ちゃんと薬を飲みきるように、って言われて…家に帰ってきたけれど。少し…気掛かりだったのは。
悠仁のこと。
喉の痛みに…発熱。
悠仁の症状は、私のそれによく似ていた。名前の通り、感染症って言うくらいだから…
私が貰ったのだとすると、その、相手は…。悠仁に違いないだろう。
菌を殺さないと、後に再発したり…腎炎を起こす引き金にもなって大事に至るケースもある。とはいえ、なんともなく過ごす人の方が大半だから……私がどうと言えることじゃあないけど。
病院が嫌いだって言ってた…悠仁。
学校が昼休みに入る時間を見計らって…
私は悠仁に電話をかけた。
『病院?……行ってないけど。』
「やっぱり…。」
予想は…的中。しかも、よくよく聞いたら…微熱が続いてるって。夜には…それが上がってくるらしい。
……学校行ってる場合じゃあないし。
「行った方がいいよ。大体、病院嫌いだなんて…。注射とかのトラウマ?」
『……………。……正解。あの、消毒の匂い嗅いだだけでもうダメ。」
「子供じゃないんだからさー、行きなよ。私行った病院、いいとこだったよ?」
『ふーん…。なんてとこ?』
「中條内科小児科。」
『……あー…、なおムリだな。そここそ、トラウマの原因。』
「……………。」
『七世が可愛くお願いしてくれたら…、別んトコだけど行ってみよっかな。』
「……は?」
『効果絶大だと思うよ?ホラ…、ハイ。』
このまま…何もしないで、もし悠仁の身に何かがあったら…後悔しても、遅い。
それなら、恥をしのんで……。
「……お願いします。嫌なら病院に付き添うから…、診てもらって下さい。」
『……………。』
「……ちょ…、何、なんとか言ってよ…。」
『……素直過ぎて…ビックリ。すげーコドモ扱いされた気がするけど……、うん、りょーかい。』
「良かった。すぐ行ってよ?」
『ホッとしちゃって。そんなに…心配?』
「…………!」
『なんて、な。』
「………………。」
『……おーい。――…冗談だっての。』
「……………。」
『なーなちゃん?聞いてる?』
「心配して……何が悪い。」
『ん?』
「私だってアンタが好きなんだから、心配して当然でしょ!」
『………ハ?』
……って、
今…私。何を言った…?
『もしもし……、オイ、今の…ナニ?』
「……とにかく!そーいうことですので!」
『待って。おま……、今、それ言うのってどうかと思うんだけど。』
「……………。」
『ちゃんと……顔見て聞きたかった。』
「………あはは……、冗談だって。間に受けないでよ。」
『は?そーゆー冗談が言えないヤツだから、俺は苦労してたんだけど?』
「……………!」
『まあ…、いーや。言わせてみせるし。』
「………バカ、もう言わない。」
『オフェンスに転じた俺をナメんな。』
「……もう、切るから!」
すぐさま…通話を切って。
私はベッドへと…うなだれた。
勢いに任せて…言ってしまった。
まだ、悠仁の気持ちすら……信じきれてないのに。
自信だって…ないのに。
まだ、言うつもりなんて…なかったのに――…。