明日ここにいる君へ



それから…、何枚か。


絵は、沢山出てきたけれど……。



手紙は…出ては来なかった。





あの頃の……健気だった自分が…
愛しく思えた。








あの時……


先に退院したのは、私の方だった。




きみなりくんが、レーザービーム……、いや、放射線の治療を受ける…その前日に、お別れした。


私は……、というと。



手術にも成功し、レーザービームを浴びることは…なかった。



お母さんいわく、私の手術は……決して簡単なものではなかった。

頭蓋低部にできた、腫瘍。

それを手術である程度取り除いて、取れない箇所には…放射線治療を施す予定だった。

難しい場所だから…、外科手術でのリスクも高かったらしい。



私は訳もわからず興奮して、「きみなりくん、わたしもレーザービームするんだって!」って…、きみなりくんに、早速、報告した。

だけど……


手術の日が決まった時。おばあちゃんだけが…猛反対したと……言っていた。



それでも……、放置することも出来ないから、母は説得を重ねて…


結局、手術へと踏み切ることになったって。



何となくだけど……思い当たるふしはあった。






私が…ベッドでうとうとしていた時……、


おばあちゃんが…声を押し殺して、泣いていたのを――…知っていたから。






「……どうして……。何で…、七世が…。」



髪を撫でる……優しい手つき。

その手が…ピタリと止んで。


代わりに、彼女の涙が…ぽたり、と――…額に落ちた。












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