明日ここにいる君へ






「こら、コジロー!」



おばあちゃんが…、犬を呼ぶその声に。

どこか、懐かしさを…感じたから。








『コタロー!こら、そっちじゃない!』



それは……この公園付近で、よく見掛けたおじいちゃんの声。

道端へと行ってしまう犬にリードをとられて、四苦八苦する姿と…重なって見えた。







私は……、その、おばあちゃんと、『コジロー』の後ろ姿をただ黙って…見送っていた。









「そっか。――……そっか……。」



やがて一人と一匹は。
ある一軒の家へと……姿を消した。




かつてのあの家の主を…


私は知っているハズだった。






『瀧口』と記された、表札………。




一方的に見知っていた、他人で…興味すら持てなかったはずの、

あの……おじいちゃんの家だった。












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