明日ここにいる君へ


真夏日と言うからには…


その暑さは、伊達ではなかった。



次第に上昇していく気温。

狭い苦しい教室に…熱気が籠る。





休み時間…。


席でただただ項垂れている私の元に…シンがやってきた。



「ジュース買ってこない?」


「……んー……、いい。」


基本、デブ性の私は……
動いて汗をかくよりも、静かにソレを鎮めた方が得策だと思ってしまう。



「買って来ようか?」


「…いいの?」


この場合、少しでも得する方を選んでしまうのが…腹黒いトコロだ。


けれど……


「シン、大好き。エーゴの宿題、写していーよ。」


相手にソレを勘づかせないことが…大事。




「大袈裟。それから…、七世。別に見返り期待してる訳じゃないから。次回はアンタが買いにいくって条件でどう?」



「………………。」



見透かされた……。



「何年、親友してるとおもってんの。七世のイイ子ちゃんぶりっこは…押し返す!」


シンはニヤリと笑って…


「はい、お金くださーい!」と、ちゃっかり請求。



掌に落とされた硬貨をぎゅっと握りしめて。


「毎度♪」


彼女は…駆けて行った。







不思議なものだ……。


自分を取り繕うよりも、何倍も何十倍も…

心が通じてる気がする。



それに…何よりも。

……楽だ。








シンを待っている間…

暇をもて余して。


机に頬杖ついて、目だけを…キョロキョロさせた。


視界にとらえたのは、……悠仁。


そろそろ構いに来てもいいくらいなのに、君は……席を立つ気配もない。


ガヤガヤとした、喧騒の中で……


何故か君の声だけは、ハッキリと耳に届いた。



「……屈託ないカオして……。」


相変わらず、よく笑う人だ……。




今日からは…いつもとは何かが違うんじゃないかって思った自分が、バカみたいに思えた。




「………鎖骨……。」

シンの言葉通りに、シャツの胸元を大きく開けた、その間から…


骨ばった、男らしい鎖骨が、見え隠れしている。



モヤモヤっと、今朝の出来事を妄想しかけて、慌てて首を振った。


惑わされるな…、私!




けれど……、

やっぱり視線は、悠仁へ。



「………………。」



君は……ちっともこっちを見やしない。



「今、一人なんだけどな……。」













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