明日ここにいる君へ
キックオフは、少し辺りが…暗くなった頃だった。
暑い夏の…夜。
波を打つように…大きな応援旗が振られて、バックスタンド席が、熱気に包まれる。
「凄い……。」
テレビで…こんな光景を見たことがあった。
いざ、会場で聞くそれは……、大きな渦を巻くようにして。私までをも、飲み込んでいくようだった。
息の合った…歌声。
それに合わせるようにして、数万のタオルが…くるくると宙を切って回る。
何となく…、私もそれをしないと、かえって目立つ気がして。
それでも遠慮がちに…肩より腕を下げて、タオルを回してみる。
―――…と、
「…………。七世、手ェどうした?」
タオルが腕に絡まって、まるで包帯巻き状態になっているそれを見ながら…
悠仁がニヤッと笑った。
試合を生で観るのは…、テレビのそれとは全く別物だった。
バスケを観た時も…そうだった。
肌で直に感じる…スピード。
……躍動感。
飛び散る汗や…息づかい。
そんなものまで感じさせる…リアルさ。
伝わってくる…興奮。
メディアでは他人事のようにして…結果だけ聞いて満足していたけれど。
ここでは自分も…当事者であるみたい。
選手の動きに…
ボールの行方に。
試合の…展開に。
目が…離せない。
前半43分。
得点のチャンスを得た、地元チームは…。
コーナーキックで飛んできたボールに、走り込んで来たフォワードの選手がヘディングで…押し込んで。
このゲーム、初の得点を上げた。
「やった…!入った!!」
思わず悠仁のジャージを掴んで…ユサユサと、体を揺する。
「わかったわかった、そんなに嬉しーか。」
されるがままの悠仁もまた…、嬉しそう。
「……来て良かっただろ?」
「……ウン。」
大きな手は……私の髪をぐちゃぐちゃに撫でて。
最後に…肘をのせては、君の体をそこに預けるようにして…私にもたれかかる。
反対の手は…ちゃっかり私の手を握っていて。
そこにぎゅううっと、力が込もっていた。
誰も……私たちを気にも留める者は、いない。
咎める者も…いない。
大勢の、何万という人だかりの中なのに…
まるで、二人きりみたいだ。
私は……
頭をコテン、と君の胸に預けて。
規則正しく脈うつ君の鼓動に…安心を覚えた。
暑い夏の…夜。
波を打つように…大きな応援旗が振られて、バックスタンド席が、熱気に包まれる。
「凄い……。」
テレビで…こんな光景を見たことがあった。
いざ、会場で聞くそれは……、大きな渦を巻くようにして。私までをも、飲み込んでいくようだった。
息の合った…歌声。
それに合わせるようにして、数万のタオルが…くるくると宙を切って回る。
何となく…、私もそれをしないと、かえって目立つ気がして。
それでも遠慮がちに…肩より腕を下げて、タオルを回してみる。
―――…と、
「…………。七世、手ェどうした?」
タオルが腕に絡まって、まるで包帯巻き状態になっているそれを見ながら…
悠仁がニヤッと笑った。
試合を生で観るのは…、テレビのそれとは全く別物だった。
バスケを観た時も…そうだった。
肌で直に感じる…スピード。
……躍動感。
飛び散る汗や…息づかい。
そんなものまで感じさせる…リアルさ。
伝わってくる…興奮。
メディアでは他人事のようにして…結果だけ聞いて満足していたけれど。
ここでは自分も…当事者であるみたい。
選手の動きに…
ボールの行方に。
試合の…展開に。
目が…離せない。
前半43分。
得点のチャンスを得た、地元チームは…。
コーナーキックで飛んできたボールに、走り込んで来たフォワードの選手がヘディングで…押し込んで。
このゲーム、初の得点を上げた。
「やった…!入った!!」
思わず悠仁のジャージを掴んで…ユサユサと、体を揺する。
「わかったわかった、そんなに嬉しーか。」
されるがままの悠仁もまた…、嬉しそう。
「……来て良かっただろ?」
「……ウン。」
大きな手は……私の髪をぐちゃぐちゃに撫でて。
最後に…肘をのせては、君の体をそこに預けるようにして…私にもたれかかる。
反対の手は…ちゃっかり私の手を握っていて。
そこにぎゅううっと、力が込もっていた。
誰も……私たちを気にも留める者は、いない。
咎める者も…いない。
大勢の、何万という人だかりの中なのに…
まるで、二人きりみたいだ。
私は……
頭をコテン、と君の胸に預けて。
規則正しく脈うつ君の鼓動に…安心を覚えた。