明日ここにいる君へ
悠仁の瞳が…、行き場を無くしたかのように。
ふわふわと…泳いでいる。
「悠仁。」
スマフォを握る、君の手が…震えている。
「悠仁!」
見渡した…部屋の中。
ベッドの脇の…棚の上に。
ナナのお気に入りだったおもちゃたちが…
まとめて、置かれていた。
お互いに…目を合わせることが、できない。
それは…、多分。
必死に堪えているものが…
堰をきって、溢れ出して…しまうから。
「……悠仁。―――…ごめん。」
「七世が謝ることなんて…1つも、ない。」
「こんなときに、傍に居なくて…ごめん。」
「……アホ。どうにも…ならないことだろ、こんなの。」
「違う…、そうじゃない。そうじゃ…ないよ。」
もっともっと、油断せずに。
私が…ちゃんと見ていたら。
こんなことに…ならなかったかもしれない。
「アンタが…ナナを助けたんじゃない。それって、どうにかしたいって思ったから…」
「でも、結局は……こうなる運命だった。」
「…………。」
「それとも。――…また、間違ったのかな。」
違う…、悠仁。
投げやりな気持ちで、あのコに手を差しのべたんじゃあなかったでしょう?
「………責めるな、悠仁。自分を…責めないで。」
「ベッドの中で…冷たくなってた。朝…、アイツご飯全然食べなくて、でも、七世に会いたかったし、学校終わったら…速攻病院に連れて行こうって思って、それでも大丈夫だって、なのに………」
「悠仁。」
「なのに、死んで…」
「悠仁!」
乾いた音が…、
頬を打つ、痛々しい音が…。
ナナの居ない、殺伐とした部屋に…響いた。
「ごめん。……でも、アンタの痛みはきっと…、こんなもんじゃあないよね。」
「………………。」
「正しかったのかどうかなんて…、私にも分からない。だけどね、悠仁。アンタは私には出来なかったことをした。アンタがナナをここに連れ出して、アンタに…なついて。私はそれが…羨ましくて。ヤキモチなんか…妬いたりして。その日々が…無かったものになんて…出来ない。出来ないし、後戻りも…出来ない。」
アンタが、どんなに穏やかな顔して…ナナに接していたのか。
私が…誰よりも知ってる。
悠仁の瞳が…、ゆっくりと。
私の方へと…向けられる。
受け止めきれない現実も…いつかは、受け入れなければいけない。
それは…、私も、多分…悠仁も。
とっくに…分かっているのに。
そうも出来ないのは――……、
間違いなく、そこに愛があったから。
簡単に、認めたくは……ないのだ。