明日ここにいる君へ


今日は…、悠仁との約束がある。

ただ、何時に会おうとか……、どこに行くだとか、そういった取り決めは…していない。


だから、いつ、何時に…連絡が来ても。すぐに会いに行けるように――…、と、心に決めていた。

妙な緊張感で…寝れなかった。



「あれ…?お母さん、今日休みなの?」


キッチンのコルクボードに貼られた、母の勤務表に、×と記載されている。

いつも慌ただしくしている母が、どうりで…朝からのんびりと珈琲を飲んでいる訳だ。


「そう。アンタは?」

「え?」

「何か、予定でも…?」

「……うん。予定は…未定。でも、ここにいる。ここにいなくちゃ。」

「誰かと…約束でも?」

「………ん。」

「……そう。」

「ねえ、七世。アンタ……」

「え?」

「……ううん。なんでもない。どうせ暇なら…、あの時計の時間の合わせかた、アンタに教える。」

「お母さんの仕事でしょ?」

「気になる人が、直せばいいわ。あれだって、時間をとるんだから。」

「結局めんどくさいんじゃない…。」

「……いいから、覚えときなさい。」


そんな…母の提案で。

朝食の片付けが一段落したあとに、珍しく二人で…座敷に向かうことになった。






< 271 / 285 >

この作品をシェア

pagetop