明日ここにいる君へ
綺麗になっていくと…、目につく物は、どんどんどんどん…増えていって。
例えば…、普段開けもしない、棚の中。
ガラスから透けて見える、統一感もない…装飾品だったり。
テーブルの…位置であったり。
気にしたらきりないほどに……ついつい、次から次へと手を出して。
親子揃った、共同作業は……次第に。
二人の間の溝までも…埋めながら。
ゆったりと、時が…流れていくのだった…。
「あの人はね、娘の私には…厳しいばかりだったけど。アンタが産まれた時は…別人のようだったわ。」
「へえ――…意外だね。」
「多少泣こうが、放っておいたって平気なのに…ホイホイ抱っこしちゃって離さないものだから、アンタに抱きぐせついて…厄介だった。」
「………スミマセン……。」
「抱っこしないと寝ないし、布団に下ろしたら…泣いちゃうし 。夜中にアンタとドライブに出て寝かしつけたことだって、何度あったか…。なのに…、よ。いくら夜泣きしようと、あの人は…我知らずって顔して。コタツで一晩、イビキかいて寝てた。本当、腹がたって仕方なかった。」
しようもないひとだったのよ、って……
眉を下げて。
けれど、その顔は……、『娘』としての…一面を。
……覗かせていた。
「最期まで、何一つ…変わらなかった。厳格で、他人にも、自分にも…厳しい性格も。その側面で…、孫の前ではデレデレして。全くブレないの。ある意味…凄いって…思った。」
『最期まで』。
それは……おじいちゃんが亡くなる、その時まで?
「おじいちゃんって…病気だったんだっけ。」
「――…うん。肺癌。」
「おばあちゃんは……その時――…」
「……普通…だったわ。取り乱したり、特別優しく接してた訳じゃ…なかった。」
「……………。」
「それが、表向きの…両親の姿。けどね、本当は…違ったんじゃないかって。」
「どうして…?」
「母親の立場になって、アンタが…入院やら手術やら、そんなことに…なったとき。地に足をつけていくことで……精一杯だった。やっとの思いで立っていた。必死…だったの。アンタに万が一何かあったらって……何度思い巡らせたかわからない。その時…、ふと、お母さんの姿を思い出してね。ここで私が倒れる訳にはいかないって、自分を奮い立たせて、強く、気丈にならなきゃあって。ああ……、お母さんもきっと、そうだったのかなあ…って。」
「………………。」