明日ここにいる君へ
いよいよ真面目に、三者対峙…となると。
「ちょっと。アンタ…紅茶って。」
お茶を出したら出したで、チクリと一言。
『何よ、緑茶がなかったからでしょう?』と腹のうちで…反抗する。
おまけに、自分がここに招いた癖に。
しん…、と――…無言を貫く姿勢。
さて、これは…どうしたものか。
戸惑うばかりの私をよそに、
とうとう痺れを切らして…、話の口火を切ったのは。
本当は一番の被害者であろう、悠仁で…あった。
「あの。」
「「………………。」」
「休日の早い時間に、突然お伺いして…すみません。」
「……………。」
相手の出方を…見ているのか、お母さんはまだ…口を利かない。
「それから、先日お会いしたときも、ロクに挨拶もしないで…」
「それは私も時間がなかったから。……それで?」
「………。登坂悠仁と申します。」
「知ってる。初めましてでも…ないしね。」
まるで、試すような…言い方。
「……そうですね。」
一方の悠仁も。
一歩も…退かない。毅然とした態度で、足ひとつ…崩すこともなく。
この、駆け引きに…挑む。
「七世さんとは同じクラスで、真面目にお付き合いさせていただいています。今日は…」
「……………。」
「七世さんを、いただきに来ました。」
「「はっ……?」」
これには。
この、『娘さんを嫁に下さい』擬きの…発言には。
流石に…母子二人、顔を合わせて――…。
そのどちらも、こう訴えている。
『なに、この展開!』
「……冗談です。七世さんが電話に出ないので、迎えに来ました。約束…してたんです。だから、半分は本当です。」
「ああ……、そう。」
徐々に…本領を発揮する…悠仁節。
「ですから、許可を頂けるなら…今から出たいと思っています。」
「それは、デート?」
「………。……今日…、七世さんのお母さんに、それから、ご家族に…会うことができました。」
君は…、おばあちゃん達の写真を眺めながら。
穏やかに…微笑む。
「僕も…、七世さんに、僕の家族に会って貰いたいと、そう思っていました。」
「……えっ。」
これには。
私の方が…驚いてしまった。
だって、悠仁の家族って―――…。
「本当は…黙って連れて行こうかと思っていました。ですが、偶然…、いえ、多分、それは狡く、許されないことだと…いうことだったんでしょう。今、ここにいるって…いうことは。」