明日ここにいる君へ


潮の香りが漂う港町。

道路に並ぶ店頭には、釣具やら、うきわやら…、海にまつわる用品店が多く目立ち…

幾つかの魚屋に、パラソル下でおばあちゃんが販売する『あいすくりん』のお店。

観光や海水浴の客で…賑わう、明るい街並み。



けれど、私たちは…

そのどれにも立ち寄ることもなく。



タクシーにのって、流れる景色を…ぼんやりと、眺めていた。







「前に…海に連れて来たいって、そう思ってたけど。こんなかたちになって…ごめんな。」

謝る必要も…ないのに。
悠仁は、寂しそうな顔して…そう言った。








一隻の船が…目の前を…通り過ぎていく。

私たちは、防波堤に…腰かけて。その、行方を…じっと見守る。




そこでようやく――…、ここに来た、もうひとつの理由を知ることになる。





4日前に亡くなった、白猫の…ナナを弔うこと。

お別れする場所を教えるために――…。






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