明日ここにいる君へ
「……櫻井は……、かわいいよ。」
真剣な瞳は。
試すようにして…私を見据える。
「…え……?」
鼓動が。全身に…響いていた。
今のは………
社交辞令?
それとも………。
「可愛いよ、多分…、ね。…なーんて、これぞ足して2で割るってヤツ?」
「…………。アホだね、ほんと……。」
大きく息を吐いて…
一気に脱力する。
お世辞でも…、そんなこと言わないでよ。
そういうことは、本当にそう伝えたい人に…言う台詞でしょう?
トクベツの、女の子に。
「……ねえ…、」
「ん?」
「あんたってモテるじゃん?」
「は?何、急に。」
「……彼女とか…いないの?」
そうだよ、トクベツの人……。
『彼女』。
「………。いない。」
「言い寄ってくるコ…、沢山いるでしょう?」
「沢山て程ではないけど。」
「その中でいいなあって思う人…、いないの?」
「…う〜ん。よく知らない人にいいなも何も
。喋ってみないと」
「………。だから友達も多いんだ。」
「そう?……てか、そっちは?いないの、そういう奴…。」
「……まだ、わかんない。」
「なんだそりゃ?」
「もう少し…、一緒にいてみないと…わかんない。」
「……ふーん、そっか。まあ、そんなもんだよな」
私達は何をするでもなく……、
ただ、並んで……立っていた。
「……部活…行かなくていいの?」
「まだ用が済んでないから、いい。もう少しだけ…ここに居たい。」
「……そう?」
「うん。」
「………雨の音って…案外心地いいね。」
私まで……
眠たくなってきた。
時間が……
勿体ないのに……。
「だろ?机…貸そうか?5分くらいなら寝てもいいよ。」
「寝るなら自分の席で寝るよ。」
「馬鹿だな、窓際の気持ち良さはハンパねえぞ?」
「…………。」
「大丈夫、ちゃんと起こすって。イタズラもしない。はい、どーぞ」
悠仁は椅子を引いて…、私を彼の席へと座らせる。
「じゃあ、失礼します。」
普段の私なら…絶対にしない爆睡スタイル。
余りにも気持ち良さそうだった……君の真似。
目を閉じて……
耳を研ぎ澄ませる。
「………………。」
てっきり何か仕掛けてくるだろうと構えていたけれど……
彼の言葉通り、全く…何もない。