明日ここにいる君へ
「………。」
無駄……?
「…わかったよ、もう何があっても声掛けない」
私はその手を振り払って…
ジンジンするほっぺたをさすりつつ…
悠仁を睨みつける。
「…まあ、そんなに怒るなよ。ちょっとカンドーしただけ」
「………。」
今更そんな屈託ない笑顔見せちゃって。
…遅いよ、馬鹿。
彼の言葉を無視して…、教室を出ようとドアに手を掛けたその瞬間……!
「「…い……ったぁ~…。」」
突然、目の前の視界が開けてきたか思うと…。
ドアから入ってきた誰かと……
正面衝動!!
尻餅ついて転んだのは…、私の方。
「わ、ごめんごめん、櫻井…大丈夫?」
手を差し延べてきたのは……
「!…常盤くん。こっちこそ…ごめん。」
躊躇なくその手をとり、「よっこいしょ」と掛け声かけて起き上がる。
「……何歳だよ?」
それを見た常盤くんが…クスクスと笑った。
「……ひど…。」
「老体にムチうっちゃって…ごめんね?」
「まだピチピチの16歳だけど」
「……!『ピチピチ』って…、今時言う?」
「…………。」
「…いや~、俺ん中でだいぶキャラ崩壊してきたよ。なかなかいいよね、その性格。……なあ、悠仁?」
「…………。」
話を振られた悠仁は…、何故かまたムスっとした顔して。
無言でこっちを見ていた。
「……何?何?おまえら何かあったの?随分険悪ムード漂ってるけど…。」
「「何も。」」
「…息ピッタリだし。」
「「誰が。」」
「…………。」
常盤くんは……苦笑い。
「つか、お前おせーよ。移動だってのにギリギリじゃん。」
「ごめん、つい先輩と話しこんじゃって。はい、焼きそばパンとポテサラ。」
「おー、サンキュ。」
悠仁は、常盤くんからパンを受け取って。ほくほく顔へと……早変わり。
「あ。釣り…」
「いらね。」
「はいよー、んじゃあ手間賃で。」
男の人って……、こういうところがこざっぱりしてて…羨ましい。
女子ならきっと…1円単位で、きっちりやりとりするだろうな…。
そんな彼等の様子を見ながら…、私はふと、気づく。
悠仁は、常盤くんをただ…待ってただけだったのだ…、と。
だから彼は「無駄な時間」だなんて言ったんだ。
「アンタももう行かねーと。」
パンを鞄に詰め込んで。なおも立ち尽くす私に…君は言った。
「………。」
「……お?無視か。」
「………。」