明日ここにいる君へ
廊下の曲がり角。
そこから顔を覗かせると……。
「………!!」
そこに、悠仁と…ミスの姿。
「…あの…、私、覗きなんて……。」
「…いや。絶対興味あるだろ~?学校イチのモテ男とモテ女の恋の行方!」
「………。」
そりゃ…、気になりはするけど……。
何となく、見たくない。
あんな綺麗な人……
振るだなんて馬鹿な男、そうそういないじゃない?
そう思っていたのに。
「……ごめん。」
悠仁の口から飛び出したのは……
思いもがけない言葉。
「……あいつは馬鹿か。」
ポツリと呟く…常盤くん。
――…うん、気持ちは…よくわかる。
「……ねえ、なんで?」
先輩は…徐々に悠仁へと詰めよって。
納得いかないのか……やや、口調がキツくなる。
「告白してきた子、ことごとく振ってるって聞いたよ?」
「……。そうっスね。」
「彼女が…、いるから?」
「いえ。」
「なら…なんで?」
「…………。」
「わかった。好きな子でもいるんでしょ。」
「………。」
「なんだ、やっぱそういうこと?」
「……てか、憶測だけで決めつけないでくれませんか?」
「理由を知りたい。付き合ってる人もいないのに…何で?」
「……。面倒だから。」
「……は?」
「色々詮索したり、勝手にヤキモチ妬いたり、…面倒くさい。」
「……はい?」
「だから…、無理なんスよ。」
「……何…、ソレ?それって女に対する偏見?…ひどくない?」
「みんながそうだとは思ってませんよ。でも…、先輩は、どーやらそうみたい。」
「…………。」
「そもそも、何で話したこともない俺?アンタに…俺の何がわかんの。」
……初めて見る……
悠仁の顔。
ミスは思いっ切り彼の頬を叩いて……
その音が、こっちの方まで響いてきた。
「サイッテー!どこが優しくていい男なのよ!」
優しいのは当たってるけど…
それだけじゃないのがその人なのに。
なんていうの?
結構素直な奴で、
単純で、
でも……
入り込むスキを与えない。
それがまた癖になって…
みんな、登坂悠仁という人を……
好きになる。