明日へのメモリー


「参った。ほんっとストレートだな、お前って……」

 ちょっと困ったように微笑みながら、またぽろっとこぼれた涙をぬぐってくれる。

「泣くなよ。馬鹿だなぁ、美里は……」

 その声は、身体が震え出すほど優しかった。

「俺が、お前の気持に全然気付いてないって、本気で思ってた?」

 あ、やっぱり……? そうよね、誰が見てもわかるよね。

 今度は恥ずかしくなった。答えることもできず俯こうとしたのに、わたしの顔を持ち上げる指に力がこもっただけ。

 わたしの心臓は今にも飛び出しそうなほど鳴っていた。

 やがて、セーター越しに胸のふくらみが彼のシャツに強く押しつけられ、顔が近づいてきた。

 びくっとしたのが伝わったのか、動くな、というように頭を押さえられてしまう。

 彼の唇は、幾度か試すようにわたしの唇をなぞった後、しっかり覆い尽くした。


 わたし、樹さんとキスしてるんだ、今……。


 うっとりしているうちに、熱くて弾力性のあるものが、閉じたわたしの唇をこじ開けるように入ってきた。

 馴染みのない感触に口いっぱい占領され、全身が激しく突っ張る。

 思わず目を見開いて、うめいた途端、ぐっと押し戻されてしまった。
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